コラム
2025/11/27

交通事故の過失割合の決まり方|一人で抱え込む前に知ってほしいこと

 「保険会社からあなたにも過失が〇割あると言われた。」・「提示された過失割合が妥当か分からない。」といったお悩みはお持ちではないでしょうか?

 過失割合とは、交通事故における当事者双方の責任の割合です。
 被害者の方にも一定の過失が認められる場合もあります。しかし、加害者側の保険会社が被害者の落ち度をことさら指摘し、不当な割合を主張してくるケースも少なくありません

 過失割合は1割違うだけで最終的に受け取れる賠償金に大きな影響を及ぼします
 したがって、提示された割合に納得がいかないのであれば、安易に受け入れて示談をしないようにしてください

 本記事では、≪過失割合の意味・決まり方≫・≪代表的な事故態様ごとの過失割合の目安≫・≪過失割合に納得できない場合の対応≫などにつき、交通事故(被害者側)の賠償請求に豊富な解決実績を有する弁護士が解説します。

 保険会社から提示された過失割合に疑問をお持ちの方に知っていただきたい内容ですので、是非、最後までお読みください。



過失割合とは

 過失割合とは、交通事故における当事者双方の責任の割合を意味します。

 過失割合は、「9対1(90:10)」や「7対3(70:30)」といった数字で表されます。
 交通事故では、追突事故や信号無視による事故を除くと、被害者側にも多少の不注意・落ち度があったとして、一定の過失が認められるケースが多いです。

 被害者にも過失があれば、その分だけ加害者に請求できる賠償金額が減額されてしまいます。
 これを「過失相殺(かしつそうさい)」と言います。

民法722条2項
 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

 1割(10%)違うだけでも受け取れる賠償金額に大きな影響を与えるため、交通事故の解決を判断する際における重要な要素のひとつです。


過失割合の決まり方

 では、過失割合はどのように決まるのでしょうか?

 基本的な考え方

 過失割合は、まずは当事者の話し合いによって決まります
 通常は、被害者と加害者が直接話し合うのではなく、任意保険会社の担当者同士が話し合うケースが多いです。被害者に保険会社がついていない時などでは、被害者自身が相手方保険会社と話し合う場合もあります。

 いずれにしても、話し合いである以上、相手方の保険会社が過失割合を一方的に決めることは出来ません
 相手方保険会社は、加害者の立場から最大限有利な割合を主張してきます。そのため、相手方の言う通りに進めることは避けた方が良いでしょう。
 不安であれば、弁護士に依頼して交渉を任せることも出来ます

 話し合いで解決できないときは、最終的には裁判となり、裁判官が判断・決定します

 過失割合の基準(判例タイムズの基準)

 過失割合を決めるにあたって、実務上、算定基準が存在します。
 具体的には、『別冊判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版)』(交通事故事案では、略して「判タ」と呼ばれています。)という書籍が利用されています。
 この書籍には、事故類型別に基本となる過失割合や修正要素(速度・道路状況など)が記載されています。

 弁護士・裁判官・保険会社といった専門家向けの書籍ですが、どなたでも入手可能です。
 ネットでも購入できますので、ご自身の事故について知りたい方はご覧になるのも良いでしょう。

 警察の実況見分・事故態様の影響

 過失割合を決める際は、まずは交通事故の状況を明らかにする必要があります。
 その上で明らかになった交通事故の状況に基づいて、「9対1(90:10)」や「7対3(70:30)」といった法的評価を行います

 事故状況を明らかにする際には、当事者の言い分だけでなく、客観的な証拠が重視されます。
 
重要な証拠のひとつが実況見分調書です
 この書類は警察官が職務上、事故状況を記録するものですので、実務上は有力な証拠とされています。

【実況見分調書の例】

 

 注意すべき点は、実況見分調書が作成されるのは基本的に人身事故に限られ物損事故のときには「物件事故報告書」という簡易的な書類しか作成されない点です。

【物件事故報告書の例】

 なお、警察官が過失割合を決めるわけではありません
 警察は事故状況について捜査を行いますが、民事上の紛争(私的な争い)には介入しないのが原則です。
 したがって、警察官から「あなたにも非がある」と言われたとしても、民事上の争いである過失割合には影響しません

 事故状況を明らかにする証拠としては、実況見分調書のほか、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像目撃者の証言、最近ではEDR(イベント・データ・レコーダー)などが重要な証拠になります。 


代表的な事故態様と過失割合の目安

 代表的な交通事故の類型について、過失割合の目安をご紹介します。ご自身の事故に当てはまるものがないかご確認ください。

 ①追突事故

 追突事故では、原則として追突車(加害者側)の過失が100%とされます
 したがって、信号待ちなどで停車していた車両が後ろから追突した場合、「10(追突車)対0(被追突車)」となります(判タ・事故態様図【157】)。

 ただし、追突された側の車にも次のような事情があれば、被害者にも過失が認められる可能性があります

◆ 正当な理由なく急ブレーキをかけた
◆ 駐車方法が不適切であった
◆ 駐停車禁止場所であった

 以上のように追突事故では被害者側は過失0ですが、状況によって過失が認められるケースもあります。

 交差点事故(直進 vs 右折)

 交差点内の事故でとりわけ目立つのが、直進車と右折車の事故(いわゆる「右直事故」)です。この右直事故では、基本的に双方過失が認められます。

 例えば、ともに青信号の交差点で、直進車と右折車(四輪車同士)が衝突した場合は「直進車20:右折車80」となります(判タ・事故態様図【107】)。
 また、直進車が黄信号で進入したのに対し、右折車が青信号で進入・黄信号で右折した場合(四輪車同士)は、直進車の過失が重くなるため、「直進車70:右折車30」になります(判タ・事故態様図【108】)。

 これらの過失割合は、修正要素、例えば「右折車の徐行の有無」や「合図(ウィンカー)の有無」などによって最終的に修正されます。
 なお、一方がバイクの場合は、バイクの方が交通弱者であると考えられているため、バイク側の過失割合が軽くなる傾向にあります。

 歩行者・自転車との事故

 交通弱者である歩行者や自転車との事故の場合、自動車側の過失が重くなりやすい傾向があります。

 横断歩道を青信号で渡っている歩行者に対し自動車が衝突した場合は、基本的に自動車側の過失が100%となります。もっとも、黄信号や赤信号であるのに歩行者が横断したときは、歩行者にも過失が認められます。

 自転車も交通弱者であると考えられているため、四輪車同士の事故と比べて四輪車側の過失が重くなります。

 また、歩行者や自転車の側が子どもや高齢者であるときには、修正要素として加害者側の過失がより大きく評価されやすいです。

 信号無視事故

 ともに動いている自動車同士の事故では、被害者にも過失が認められるケースが多いです。もっとも、信号無視があれば話は別です。

 例えば、信号機のある交差点で、青信号と赤信号で直進してきた四輪車同士が衝突した場合は、赤信号側の過失が原則100%となります(判タ・事故態様図【98】)。ただし、ともに信号無視をした場合には、双方に過失が認められます(判タ・事故態様図【100】など)。


過失割合と損害賠償の関係

 過失割合は、相手方から受け取れる賠償金額に大きな影響を与えます

 例えば、治療費・慰謝料・逸失利益などを合わせて、賠償金が計1000万円であったとします。
 被害者に過失がない、すなわち過失割合が「10対0」であれば、1000万円全額を受け取れます。
 しかし、被害者にも1割の過失がある(「9対1」)とされれば、過失分の1割が差し引かれ、「1000万円×(1-0.1)=900万円」しか受け取れません。
 さらに過失が大きくなり、「8対2」、「7対3」...となれば、下表のとおり、請求できる金額は800万円、700万円...と減少してしまいます。

過失割合

受け取れる賠償金額

10対0

1000万円

9対1

900万円

8対2

800万円

7対3

700万円

6対4

600万円

5対5

500万円

 このように過失割合は、治療費・慰謝料・逸失利益などの全ての賠償項目に影響を与え、1割違うだけでも受け取れる賠償額が変わってきます。
 特に、死亡事故や後遺障害が残った事故など賠償総額が大きいケースでは、金額に与えるインパクトが大きいため、過失割合をめぐる争いが生じやすい傾向があります。 


過失割合に納得できない場合の対応

 過失割合は、交通事故の損害賠償において重要であるため、安易に妥協してはなりません
 納得できない場合にとれる対応を頭に入れておきましょう。

 保険会社の提示が必ずしも正しいとは限らない

 相手方の保険会社の提示する過失割合は、必ずしも正しいと限りません。

 保険会社は営利企業である以上、少しでも支払額を抑えようと考えています
 したがって、加害者の言い分だけを踏まえて、できる限り加害者に有利な割合を主張するのが通常です。

 「交通事故に詳しい保険会社が言うなら正しいはずだ」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
 しかし、相手方の保険会社は少しでも支払額を抑えたいのであり、客観的に正しい割合を主張しているとは限りません。

 判例タイムズや裁判例との比較

 保険会社の提示する割合が正しいかどうかを知るには、前述した判例タイムズの算定基準を参照するのが良いでしょう。
 
 判例タイムズは一般の方でも購入可能ですので、入手してご自身の事故にあった類型を探してください。基本割合や修正要素が分かります。
 算定基準と異なる割合を相手が主張しているのであれば、理由を聞くのもひとつの方法です。
 またそもそも、事故類型がどれかの段階で見解が食い違っている場合もあります

 判例タイムズの算定基準だけで全ての過失割合を判断できるわけではありません。
 典型的な事故ではないケースや基準がある事故でも特殊な事情があるケースでは、過去の裁判例が参考になります。

 弁護士を通じた交渉・訴訟提起による修正

 判例タイムズや裁判例を根拠に交渉ができるとはいえ、基準の見方が分からない、裁判例を調べられないといった問題が生じるでしょう。
 また、たとえ正しい意見であっても、経験豊富な保険会社に対して、上手く主張ができないかもしれません。

 保険会社と対等に交渉するには、弁護士への依頼がオススメです
 弁護士は、基準や裁判例を正確に読み解いたうえで、法的に説得力のある主張をします。また、主張を裏付ける刑事事件記録(実況見分調書など)、ドライブレコーダー等の証拠収集も行います。
 交渉で合意できないときは、最終的には訴訟を提起し、過失割合の修正を目指します。

 正しい過失割合にするだけでなく、健康保険の利用による治療費の圧縮、人身傷害保険の請求など被害者側の負担削減に向けたアドバイスも可能です。

 
 過失割合に納得がいかないときは、弁護士にご相談ください。 


過失割合に不満があるときは早期相談

 ここまで説明してきた通り、過失割合は交通事故における当事者双方の責任の割合であり、受け取れる賠償金額を大きく左右します。

 過失割合は話し合いで決まるのであり、保険会社が一方的に決めるものではありません。
 弁護士に依頼すれば、算定基準や過去の裁判例を根拠にして、法的に説得力のある反論が可能です。証拠に基づいて正しく主張すれば、適切な過失割合で損害賠償を請求でき、妥当な金額を受け取れる可能性があります。

 湊第一法律事務所では、交通事故被害者の方を多数サポートしてきており、過失割合をめぐる争いでも豊富な実績を有しています。弁護士が直接対応し、あなたの状況に合わせた最善の解決策を提案いたします。

 初回相談は無料です。相手方が示す過失割合に納得がいかない方は、まずはお気軽にお問い合わせください。


【この記事の監修弁護士】

弁護士 國田 修平
第二東京弁護士会所属
湊第一法律事務所・パートナー弁護士

依頼者と「協働する姿勢」と、法律用語を平易に伝える対話力に定評がある弁護士。
紛争の背景にある事情を丁寧にくみ取り、依頼者と共に解決への道筋を描くスタイルを貫いている。

<略歴>
愛媛県出身。明治大学法学部卒業。慶應義塾大学大学院法務研究科(既習者コース)を修了後、司法試験に合格。

全国展開の弁護士法人に入社し、2年目には当時最年少で所長弁護士に就任。その後、関東に拠点を移し、パートナー弁護士として、組織運営や危機管理対応、事務局教育などに携わる。労働法務・社内規程整備などの企業法務から、交通事故・相続・離婚・労働事件といった個人の法律問題まで幅広く対応。中でも、交通事故(被害者側)の損害賠償請求分野では、850件の解決実績を有する。
弁護士業務の傍ら、母校・明治大学法学部で司法試験予備試験対策講座の講師も務め、次世代を担う法曹育成にも力を注いでいる。

<主な取扱分野>
企業法務全般(契約書作成・社内規程整備・法律顧問など)
債権回収

交通事故などの損害賠償請求事件
労働事件(労使双方)

<弁護士・國田修平の詳しい経歴等はこちら

© 湊第一法律事務所 交通事故専門サイト