停車中に追突され、首と腰を負傷―。「非該当」から異議申立てを実施した結果、併合14級が認定。さらに、示談交渉により主夫休損も認められた事例。 |
目次
ご相談の背景
ご依頼者様は、自家用車を運転中、赤信号により停車していたところ、後方から走行してきた車に追突される交通事故に遭われました。
事故直後から首と腰に強い痛みが生じ、整形外科にて「頚椎捻挫」・「腰椎捻挫」と診断。リハビリや投薬治療を継続しましたが、痛みが長期間にわたって続き、事故から9か月以上にわたって通院を余儀なくされました。
その後、症状固定を経て後遺障害の申請を行いましたが、結果はまさかの「非該当」(=後遺障害等級に該当せず)。
自賠責保険による認定結果では、「他覚的所見に乏しく、将来的な回復が困難とまではいえない」と理由が示されていました。
この非該当の結果に対し、ご依頼者様は「このまま泣き寝入りするしかないのか。」と深い不安を抱かれており、当職としても受け入れ難い内容でした。
そこで、自賠責保険の「非該当」という判断を不服として、異議申立てを行うことにしました。
担当弁護士(國田)の対応
【1 異議申立て】
「頚椎捻挫」や「腰椎捻挫」は、交通事故によって生じることが多い傷病です。しかし、痛みやしびれといった神経症状は、レントゲンなどの画像検査では明確に確認できない場合が多く、第三者からはその症状が理解されにくいという側面があります。
このため、自賠責保険における後遺障害認定では、「他覚的所見が乏しい」として、症状が過小評価されることも少なくありません。
もっとも、後遺障害等級14級9号は、「神経症状が医学的に説明可能であること」が認定の要件であり、「画像上明確に確認できること」まで必須とされていません。
異議申立てにあたっては、ご依頼者様の症状が「医学的に説明可能な神経症状」であることを、以下の観点から主張・立証しました。
①事故態様と衝撃の強さの立証
今回の事故は、加害車両がほとんど減速せずに追突してきたものです。刑事記録およびドライブレコーダー映像の分析から、ご依頼者様の車両が衝突の衝撃によって約8メートル前方に押し出されたことが確認できました。
車両の修理費も60万円を超え、骨格部にまで損傷が及んでいたことも踏まえて、事故の衝撃の大きさを裏付ける客観的資料を整えました。
②治療経過と症状の一貫性
ご依頼者様は、事故発生から症状固定に至るまで約9か月間、週2~3回の頻度で継続的に通院しました。そして、通院期間中、首・腰の痛みや可動域制限を一貫して訴えておりました。
そこで、後遺障害診断書、診療記録、さらに症状固定後の自費での通院記録などを通じて、症状が一過性ではなく持続的であること、また容易には回復が見込まれないことを立証しました。
③MRI画像による医学的整合性の説明
MRI画像上、ご依頼者様には頚椎および腰椎に椎間板の変性やヘルニアの所見が確認されました。そこで、画像所見と症状の関係性を整理して、ご依頼者様に出現している神経症状の根拠としてMRI画像を証拠として提出するとともに、医学的整合性を主張しました。
以上①〜③の観点から資料を収集・分析し、丁寧に主張を構成した異議申立書を提出した結果、頚部および腰部の神経症状についてそれぞれ14級9号が認定され、併合14級が認められました。
【2 示談交渉】
示談交渉では、休業損害および後遺障害による逸失利益の認定が争点となりました。
ご依頼者様は事故当時、「専業主夫」として家事や育児を担っておられましたが、こうした立場に対する補償は軽視されがちな現実があります。
そこで、当職は、配偶者である奥様の勤務表や給与明細などを取り付けたうえで、ご依頼者様が家事全般を日常的に担っていた実態を丁寧に主張しました。
その結果、保険会社も「家事従事者としての労働の損失」を認め、主夫としての休業損害および逸失利益が認定されました。
弁護士がサポートした結果
〇後遺障害等級14級9号(頚部・腰部)が異議申立てによって認定(併合14級)
〇示談交渉にて、主夫としての休業損害および逸失利益が認定
〇慰謝料・休業損害・逸失利益を含む適正な賠償額にて示談成立
担当弁護士(國田)のコメント
後遺障害等級や損害賠償の認定では、診断名や通院回数だけで判断されるものではありません。事故態様、治療経過、症状の一貫性、医学的整合性、さらには生活実態に至るまで、様々な要素を丁寧に拾い上げ、適切な資料に基づいて粘り強く主張することが重要です。
今回は、主夫として日常生活を支えていたご依頼者様の損害が正当に評価された点に大きなポイントがあると感じています。
同様の案件においても、適切な資料収集と法的主張によって、正当な補償を得られる可能性が十分にあります。
「後遺障害が認定されないのは仕方がない」・「主夫だから休業損害は出ないと言われた」。
そうあきらめてしまう前に、是非、弁護士にご相談ください。
更新日:2025年7月15日
【この記事の監修弁護士】
弁護士 國田 修平(第二東京弁護士会所属)
湊第一法律事務所・パートナー弁護士
〜 依頼者と「協働する姿勢」と、法律用語を平易に伝える対話力に定評がある弁護士。紛争の背景にある事情を丁寧にくみ取り、依頼者と共に解決への道筋を描くスタイルを貫いている。 〜
<略歴>
愛媛県出身。明治大学法学部卒業。
慶應義塾大学大学院法務研究科(既習者コース)を修了後、司法試験に合格。
全国展開の弁護士法人に入社し、2年目には当時最年少で所長弁護士に就任。その後、関東に拠点を移し、パートナー弁護士として、組織運営や危機管理対応、事務局教育などに携わる。労働法務・社内規程整備などの企業法務から、交通事故・相続・離婚・労働事件といった個人の法律問題まで幅広く対応。中でも、交通事故(被害者側)の損害賠償請求分野では、850件の解決実績を有する。
弁護士業務の傍ら、母校・明治大学法学部で司法試験予備試験対策講座の講師も務め、次世代を担う法曹育成にも力を注いでいる。
<主な取扱分野>
・企業法務全般(契約書作成・社内規程整備・法律顧問など)・債権回収
・交通事故などの損害賠償請求事件
・労働事件(労使双方)